レプリカユニフォームを買うオンナ
あ、えーっと……
先日、神宮球場へ出向いた際、せっかくビジター球場に行くのならと、横浜駅のベイスターズショップに立ち寄り、ちょっと奮発して贔屓の選手の背番号入りユニフォームを購入してしまいました。
DeNAベイスターズのビジター仕様レプリカユニフォーム(贔屓の背番号入り)です。8200円!
神宮球場の最寄り・信濃町駅のトイレで新品のユニフォームを早速開封。キャミソールの上、直肌にユニフォームを一枚羽織ると、その腕の隙間からヒンヤリとした五月の風が私の皮膚の上を駆け抜けて行った。
球場に向かう途中、ビルの鏡面ガラスを通してみた己の姿を見た時、私は柔らかな目眩に襲われた。
「あ、今の私はどこからどう見ても、今永昇太さんの応援者だな。言い逃れは出来ないな」と。
またアイドルヲタクが推しの名前の刺繍された特攻服を着ている時のようなみなぎりと、贔屓に恥じない行動を取っていかねばならないな。と、背筋が引き締まるような思いもあった。
そして少し冷静になってくると、レプリカユニフォームに対して、推しとの同一化というか、むかし交際していたパートナーから女子校の制服を渡された時(俗に言うコスプレ)に近い皮膚感覚までフラッシュバックしてきて、
「んじゃあ高校生のころ好きだった女の子の事をいろいろ聞かせて?」と、自分を無にしながら、若かりし時代の彼が思っていた「あの子」になりきろうとした夜の事を思い出した。
布を通して自分ではない何者かの生が体をまとっていく感じ。そしてそれを突き詰めようとすると自分が無に近づいていく……
レプリカユニフォームをまとうオンナ。さて私は何者でしょう。